このたび、初の古典リサイタルを開催することに至りましたのは、箏曲演奏家であり作曲家としても活躍した「幾山検校(1818?-1890)」と「山口巌(1868-1937)」の関係とその業績を広めたいという想いからでした。
この2人の作曲家は、京都盲唖院(現京都府立盲学校)において箏曲教育に携わり、自ら箏・三絃を手付した作品を残した人物であるということが大きな特徴です。
今回のプログラムでは、両者と同じように自作曲を作り、地歌の絶頂期に新たな作風で合奏・箏のみの作品を生み出した「光崎検校(?-1853)」の《秋風の曲》を取り上げます。
山口巌の作品は、ご披露される機会の少ない楽曲を選曲いたしました。《琴の栄》は前歌・後歌を組歌《菜蕗》と、手事を《六段の調(初段)》と合わせ、新たな合奏を試みます。《みだれ》は山口の三絃替手手付による三絃合奏にて演奏をお届けします。
最後に幾山検校の代表作である《萩の露》で終曲とさせていただきます。
山口巌は、1911年から東京音楽学校(現東京藝術大学)において、生田流箏曲初の講師を務めました。現代邦楽の父と称される「宮城道雄(1894-1956)」より以前のことです。
自身の出身大学である東京藝術大学の箏曲教育の歴史に大きく携わった山口の作品を中心に、演奏を通じてこれまでの研究発表の機会とさせていただきます。
また、古典の研鑽と今後の新たな発見および研究に繋がる演奏会としての、第一歩を踏み出したいと思います。
多くの皆様にぜひ会場にて直接お聴きいただきたく存じます。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。