四季の寿(幾山検校作曲、山口巌三絃替手手付)
解説
昭和4年(1929)、箏・三絃ともに幾山検校の楽曲であるこの曲に、三絃の替手の一部分の手付が加えられました。
山口の師である、古川瀧斎と関わりの深かった幾山検校は、芸に関して、二人は並び称されており、合奏においては、古川の三絃には幾山の箏がつきものとされていたそうです。
山口自身も、幾山検校から恩顧を受けていたそうですが、この曲は、山口が幾山の作品に手付した唯一の作品であり、昭和4年は、山口が晩年の頃の作曲です。
師古川と親交の深かった幾山の楽曲に替手を加えたのは、山口が少なからず影響を受けていたことと関係するのではないかと考えられます。
この曲は、初春を言祝ぎ、夏秋冬の景物を短く歌い込み、千鳥の声に寄せて、千代を寿ぐ歌となっています。
一般的には、箏・三絃のみで演奏される曲ですが、山口が取り入れた細かく華やかな替手の手が入ることにより、より曲の明るさが増すように感じられます。
独自の旋律をもちつつ、原曲に寄り添っている三絃替手の効果を直接感じていただき、今現在では珍しい合奏形態での演奏を聴いていただきたいと思います。
歌詞
明け渡る 春の山家を見渡せば 花鶯の色香にも
君は七瀬の七と千代 軒端の松に鶴の声 夏白波の夕風に
〔手事〕 やがて涼しき月影に 清く宿して
加茂の羽がはの友千鳥 いや千代千代と歌い祭れり
あわせて読みたい記事
箏曲演奏家 福田恭子