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琴の栄(山口巌作曲)

解説

大正3年(1914)の八橋検校230年忌記念、および翌大正4年(1915)の生田検校200年忌記念の際に、山口巌が自ら和歌を詠み、大正7年(1918)にその歌に、箏の手付をした作品です。

箏の元祖である八橋検校から北島検校へ、また生田流の祖である生田検校の三検校の功績を称え、生田流箏曲を後世まで伝え続けたいという山口の願いが込められている楽曲であると考えられます。

山口が、大正9年(1922)の生田検校250年祭のときに、その三人の検校を詠い込んだ和歌が以下のように残されています。

八つ橋を 亘てここに北島の 南にそそぐ 生田川みづ

この曲の前歌と後歌の歌と手の節は、ほとんど同じ節で作曲されており、八橋検校作曲の《菜蕗》と合うように作曲されています。

手事部分は、《六段の調》の初段と合わせることができ、今回は、〔手事〕のみ合奏形式で演奏披露致します。

また、本日の演奏では、山口巌の芸統のみに受け継がれている、「裏連(サーラリン)」という手法の、特徴的な弾き方を取り入れて演奏させていただきます。

下図は「裏連(サーラリン)」の譜例(山口巌箏手付による《春重ね》の楽譜より)

裏連(サーラリン)

裏連は、一般的に、人差し指の爪の表側と裏側を巾の糸に引っかけながら、交互に弾き、その後、人差し指と中指の爪の裏側を使い、基本的には、巾の糸から、楽譜に指示された糸まで下りていく奏法です。

一方、山口系統の裏連は、人差し指の裏側のみを使い、一方方向に巾の糸を短くはじき、その後、巾から下りる際には、中指は使わず、人差し指のみで下りていく弾き方です。

音色も一般的な裏連のように、細かい音が連なる華やかな音色ではなく、人差し指のみを使い、爪の裏で一方方向のみではじくため、音数も少なく、素朴で平たい音色となるように感じられます。

歌詞

八橋の 奏で初めにし菜蕗草(ふきくさ)は 生田の園に今も栄えあり 今も栄えあり
〔手事〕今も世に 奏づる響き絶えざるは 八千代生田の琴の爪音 琴の爪音

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箏曲演奏家 福田恭子

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