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若手演奏家のためのポートフォリオ作成のポイント

こんにちは、箏曲演奏家の福田恭子です。

先日、東京藝術大学の音楽活動支援として、学生が卒業後に音楽家として活動していくために、自分自身のポートフォリオ・サイトを作成するワークショップ「​音楽家になるためのWeb発信講座~ポートフォリオ・サイト作成支援~」を開催致しました​。

私自身、初めてポートフォリオサイトを作成しようと思ってインターネットを検索した際に、グラフィックデザイナーやイラストレーター向けのポートフォリオサイトの情報はたくさん見つかりましたが、演奏家向けのポートフォリオサイトの情報は見つかりませんでした。そこで、自身の経験を踏まえ、学生が卒業後に演奏家として、自分をアピールする手段の一つとして、ポートフォリオ・サイトを活用してほしいと思い、このワークショップを企画しました。

リサーチバンクというアンケート調査サイトによる「コンサート・ライブに関する調査」によると、コンサートやライブの情報はアーティストなどのWEBサイトから入手するという人が49.3%(男性42.9%、女性55.4%)というデータがあります。このことから、演奏家として活動するにあたって、自身のWEBサイトを作成することは必須であると言っても過言ではないと思います。

今回はワークショップでお話した内容をぎゅっと凝縮してお届け致します。

ポートフォリオとは?

ポートフォリオとは、元々は書類を運ぶ平らなカバンのことを意味していました。自分の作品を平らなカバンに入れておくことから転じて自分の作品を周囲に伝えるための作品集のことをポートフォリオと呼ぶようになったと言います。つまり、ポートフォリオサイトとは、自分がこれまで作ったWEBサイト、イラスト、写真などの作品を集めたWEBサイトを意味します。

我々演奏家にあてはめると、自身の演奏活動暦、演奏の音源や映像などを掲載したWEBサイトということになるでしょう。いわば、演奏家の個性や専門性を対外的にアピールするためのプロモーションツールです。

ポートフォリオサイトに必須のコンテンツ

サイトを作成するにあたって、私が必須と考えるコンテンツは、以下の4つです。

  • プロフィール
  • 演奏活動歴
  • 演奏音源や映像
  • コンタクト(お問い合わせ)フォーム

プロフィールが必要であることは皆さんお分かりかと思います。ただし、プロフィールを作成するにあたって意識したポイントがあります。

それは、人物像が伝わる内容にすることです。

一般的に「xxxx年〇〇大学卒業、xxxx年△△コンクール最優秀賞受賞、・・・」といった事実を列挙しただけのプロフィールが多いと思いますが、私の場合、WEBサイトから教室の集客へつなげたいという意図もあり、「3人兄妹の末っ子として生まれた」や「小中高時代はスポーツにも励んでいた」といった、演奏家のプロフィールとしては不要と思われるような内容もあえて書くようにしました。

また、自己紹介動画をプロフィールページに掲載するようにしました。動画には「文字」「音声」「映像」の情報が含まれており、その情報量は文字や写真だけの場合の5,000倍とも言われています。箏を習いたいと思ってインターネットを検索している人は「どんな先生だろう?」「怖そうな先生だと嫌だな…」など、様々な不安を抱えていると思いますので、そうした不安を解消していただくための判断材料になればと思っています。

演奏音声や映像は演奏家にとって最重要コンテンツです。にもかかわらず、(他ジャンルの音楽業界における状況は分かりませんが)少なくとも私の周囲の邦楽演奏家においては、演奏会の際に自身の演奏を録音したり撮影する人は多くありません。演奏会は、会場にいらしたお客様へ演奏をお届けするのが最も大事であることはもちろんですが、自分をPRするためのネタを収集する絶好の機会でもあります。主催者や共演者の許可が得られるのであれば、録音や録画をさせていただき、どんどんサイトに掲載していきたいです。

なお、録音や録画をするにあたって、高価な機材も高度な編集スキルも必要ありません。今やスマホがあれば、録音も録画もできますし、簡単な編集ならスマホアプリでもできてしまいます。もちろん、ちゃんとした機材で録音・録画・編集したものと比較にならないのは当然ですが…。それでも、完璧に固執するあまり行動を起こせないでいるよりも、できる範囲で行動を起こした方が断然成果につながりやすいというのは言うまでもありません。

ポートフォリオサイトから集客につなげる

「プロフィール」「演奏活動歴」「演奏音源や映像」「コンタクト(お問い合わせ)フォーム」が出来上がったら、ポートフォリオサイトに最低限必要なコンテンツがそろったことになります。ただし、必須コンテンツをそろえただけでは、あまり意味はありません。人によってポートフォリオサイトを構築する目的は様々でしょうけども、概ね「演奏会の告知」「教室の生徒募集」「演奏の依頼受付」といったところではないでしょうか。本サイトにおいても同様で、サイトのトップページからそれぞれの詳細を掲載したページへリンクするような設計にしております。
ポートフォリオ解説

※2018年3月時点のサイトデザインになります

まとめ

ポートフォリオサイトは1度作ってしまったら終わりというものではなく、日々改善を重ねて育てていくものです。その際に常に意識しておきたいのが、人々が求めている情報を発信できているか?ということです。人々が知りたい情報をサイトに盛り込むことによって、サイトにアクセスが集まり、それに付随して演奏会の告知なども見てもらいやすくなります。サイトを公開してから数ヶ月間は思うようにアクセスが集まらないかもしれませんが、試行錯誤を続けていくうちに、サイトを見て演奏会に来てくださる方がいらっしゃったり、効果を実感できるはずです。

よくある質問

Q FacebookやTwitterなどのSNSをポートフォリオとすることは可能ですか?
A FacebookやTwitterなどのSNSは、相互に繋がりを持ったユーザー同士でのクローズドな情報発信の形態になります。

Facebookであれば「友達」、Twitterであれば「フォロワー」という限られたユーザーに対してしかアプローチすることができません。

たとえ公開範囲を「全体公開」にしたとしても、アプローチできる範囲はFacebookやTwitterなどのユーザーに限定され、FacebookやTwitterを利用していない人々にアプローチすることはできません。

また、次から次へと新しい情報がタイムラインを流れて行くため、たとえば1ヶ月前に投稿した内容が遡って見られることはほとんどなく、ポートフォリオとして利用するには向いていません。

一方、ウェブサイトは、誰にでも公開されているオープンな情報発信の形態であり、いつでも誰でも閲覧することができます。また、様々な情報を分類し蓄積することが可能で、たとえ何年も前に投稿した記事であっても繰り返し閲覧されます。
Q なるべくお金は掛けたくありません。無料でポートフォリオを作成することは可能ですか?
A 無料でということであれば、以下のサービスが有名です。
・Tumblr( https://www.tumblr.com/ )
・WIX( http://ja.wix.com/ )
・Jimdo( http://jp.jimdo.com/ )

ただし、本サイトは上記のいずれでもなく、WordPressというサービスを利用して作成しています。自由度が高いため、思い通りのサイトを構築できるというのが、WordPressを選んだ理由です。その代わり、レンタルサーバーを契約するのに費用が掛かる(と言っても月額数百円で始められます)のと、少々技術的なハードルが高いのがネックと思われます。

箏曲演奏家 福田恭子

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星島淑子・真裕子ジョイントリサイタル(表)